一人広報の実務で感じた、AIを活用しやすい業務とそうでない業務

AIを業務で使うようになってから、「とりあえず触ってみる」という段階は、少しずつ抜けてきました。

実際に使い続ける中で、これはかなり助かる・これはそこまで変わらない・これは自分でやった方が早い、という線引きも少しずつ判断できるようになってきました。

私は社内で一人広報のような立場で仕事をしているのですが、仕事の幅が広いことが特徴です。抽象的なイメージを形にしたり、関係者ごとの考え方の違いを見ながら伝え方を変えたり、相手の頭の中を整理して進みやすい形にすることが、今の私の仕事だと考えています。

その中でAIは、単なる効率化の道具というより、ぼんやりした考えを複数の形で可視化して、判断しやすくするための補助役として使う場面が増えました。

今回は、一人広報として働く中でAIを活用することで進めやすくなった業務と、そうでもなかった業務をまとめてみます。

目次

結論:AIと相性がいいこと・難しいこと

AIと相性がいいこと

  • 情報整理
  • 論点出し
  • 資料のたたき台づくり
  • コピーの方向性出し
  • 抽象的なイメージの言語化

AIだけでは難しいこと

  • 最終判断
  • 相手に合わせた微調整
  • 社内調整
  • 空気を読むこと
  • 報告するタイミングを読むこと

AIを使用しない日はなく、私の業務に欠かせない相棒になりましたが、

どの案を採用するか
誰にどう見せるか
今このタイミングで出すべきか

このあたりはやはり自分で判断する必要があります。そしてこの判断こそ、コミュニケーション能力やこれまでの経験が活きる場面でもあります。

AIを活用することで進めやすくなった業務

1.思考整理・論点出し

これは一番大きいです。

情報はあるのに、何から考えればいいのか分からない。論点が散らかっていて、うまく言葉にできない——そういうときに、口頭で出てきた言葉や内容を打ち込むことで、目的の確認や論点の整理をかなり早く進められるようになりました。

どんな仕事も、最初の「何を目的とするか」が大切ですよね。そこを早めに言語化できると、認識のズレを防ぎやすくなります。

時短になるというより、相手が判断しやすい土台を早めに作れるようになる→認識のズレが発生しにくくなり、フリダシに戻ることが激減する、といった感じです。

2.資料の下書き・構成案づくり

提案資料の構成、見出し案、メリットと懸念点の整理などは、相当助けられています。

そのまま出すことはほとんどありませんが、ゼロから作るのとたたき台がある状態から整えるのとでは、負担がかなり違います。

特に、抽象的なイメージを「こういう方向ですか?」「こちらの切り口もありそうです」「この見せ方なら比較しやすいです」という形で複数パターンにして見せたいときに、この補助はかなり大きいです。

これは単なる作業短縮というより、意思決定者が比較しやすい状態をすばやく作れることに価値があると思っています。方向性をその場で絞り込めるため、やり取りの往復が減り、結果的に全体のスピードも上がります。方向性を固めたいときほど、このありがたさを感じます。

3.チラシのコピーやWeb広告文のアイデア出し

自分ひとりで考えていると、どうしても発想が偏りやすいのですが、AIを使うと切り口を一気に広げやすくなります。

ただ、ここで大事なのは「AIが勝手にいい言葉を作ってくれる」という話ではないことです。

どのターゲットに向けるのか
何を強みとして見せるのか
どの感情を動かしたいのか

こうした前提をある程度整理しておかないと、使える案は出てきにくいです。

私の場合、前職でWeb広告文を作っていた経験や、行動経済学・キャッチコピーを学んだ経験があり、その分だけ指示の精度を上げやすくなるのではないかと考えています。例えば、アンカリング効果・フレーミング効果・選択のパラドックスといった前提を踏まえて指示を出すことで、より意図に近い案を引き出しやすくなります。

案をたくさん出せることよりも、相手に納得してもらえる方向に絞り込めることの方が、実務では大切だと思っています。

AIを活用しても、あまり短縮できなかった業務

1.判断が必要な部分

AIは案をたくさん出してくれます。でも、案が増えるほど逆に迷うこともあります。

どこまで攻めた表現にするか・今このタイミングで出してよいか・この言い回しが本当に相手に刺さるか——こういうことは、最終的には自分で判断するしかありません。

どの案に責任を持つか、どこまで考えるかを決めるのは人間の役割です。ここを曖昧にしたまま使うと、かえって案が増えすぎて前に進みにくくなることもあります。

2.相手に合わせた微調整

同じ内容でも、誰に出すのか・どの場面で使うのか・何を警戒されやすいのかによって、伝え方はかなり変わります。

特に、トーン・温度感・言い回しのニュアンスのあたりは、最後に自分でかなり手を入れることが多いです。意思決定者が複数いて考え方のタイプが違う場合はなおさらで、一方に寄せるともう一方が通らない、ということもよくあります。

ここは文章力だけではなく、相手ごとの判断基準を見極める力が必要なんだと思っています。

3.社内調整・空気を読む部分

広報の仕事は、ここが大きいです。むしろ一番大切な気がします。

関係者の関心が今どこに向いているか・社内がその話を受け止められる状態か・今出すと進むのか少し寝かせた方がいいのか——資料自体は整っていても、タイミングを外すと進まないことがあります。そして一度止まると、そのまま再開されないこともあります。

実務をやっていると、広報や提案の仕事は作る力だけではなく、通す力も必要なんだと強く感じます。この「通す力」は、日頃の社内の様子や相手の性格、会話の流れを見ていないと身につきにくい部分だと思っています。

この経験が、今の仕事にどうつながっているのか

AIを使えること自体は、これからそこまで特別なことではなくなっていきますよね。Claude Codeのように、AIがエージェントとして自律的に動いてくれる時代になり、私がやっているような作業の流れも、気づけば「当たり前」になっているかもしれません。

でも、ふわっとした要望を整理すること・複数案に分けて見せること・相手が判断しやすい状態まで整えること・最後は相手に合わせて調整すること——こういう部分には、ちゃんと仕事としての価値があると信じています。

依頼する側からすると、「なんとなくこうしたい」で止まっていることって、意外と多いのではないでしょうか。そんなときに必要なのは、ただ手を動かす人というより、曖昧な要望を整理して、見える形にして、前に進めやすくする人なのかもしれません。

デザインでも、広報でも、資料作成でも、結局求められるのは相手の頭の中を整理して、進みやすい形にすることなのだと思います。時代がどう変わっても、この感覚はこれからも大切にしていきたいです。

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